【PSO2・航海日誌】【ショートストーリー】アクシィとキャティアの航海日誌:”序章・後編”
はじめに・・・(注意事項)
※この記事は、PSO2(ファンタシースターオンライン2)の世界感に、著者:アクシィ・おーきどの独自見解、キャラクター設定などを組み込んだ二次創作になります。ゆえに、ファンタシースターオンライン2に登場する固有名詞、ストーリー、設定などの著作権は全て株式会社セガゲームスにあります
※原作はあくまでPSO2(ファンタシースターオンライン2)です。著者と読者様の間の原作に対する理解の相違、拙作の至らぬところなど感じられると思いますが、こちらに関しては、文責は著者:アクシィ・おーきどにあります
※無断転載並びに再配布は固く禁止します
それでは、ご理解いただけた方で興味あれば、続きをどうぞ。
序章:後編 ”相棒(バディ)”
新人アークスのアクシィ・オーキド、そしてキャティア・イクストルへの最初の任務は、惑星ナベリウスでの原生生物の調査である。惑星ナベリウスは文明圏から離れ、比較的安全な惑星とされてきた。だからこそ、新人アークスの初陣の舞台として選ばれている。
だが、この日は様子が違っていた。
「惑星ナベリウスにて、コードD発生!」
この日、ナベリウスにおいて、ダーカー種の出現、侵蝕が観測された。”蟲型”と呼ばれているダーカー種、ダガンやカルターゴと呼ばれている個体が出現する。蟲型ダーカーは、個々の戦闘力ではなく数で押してくる傾向がある。一体ごとの戦闘力は、熟練アークスにとってはさほど脅威ではない。だが、今ナベリウスにいるのは”新人アークス”である。至る所で若いアークスたちの断末魔が聞こえる。いまやナベリウスは戦場だった。
キャティアにとっては、ダーカー種との遭遇はこれが初めてではない。ダガンは彼女にとっては”数だけは多いクソ蟲”であった。ウォンドを片手に、テクニックで動きを止め、コアをウォンドで砕く。その繰り返しで確実にダガンの数を減らしていく。
一方、アクシィも後方から来るダーカー、そして射程の長い攻撃手段をもつカルターゴを警戒し前進する。
「イクストルさん、十一時方向にカルターゴが二体!距離は百メートル。間に合いますか!」
「任せる。制圧射撃お願い。その隙に接近する」
アクシィがランチャーにクラスター弾を装填し、カルターゴの頭上で炸裂させる。レーザーを撃とうとコアを展開していたカルターゴに、フォトンを含んだ破片が食い込み、動きが止まる。その間にキャティアがカルターゴの後ろに回り込み、コアを、フォトンを纏わせたウォンドで砕く。
「残りは?」
「視認する範囲にダーカー因子の反応なし」
「分かった。キャンプシップに連絡。エリアDはクリア、指示を請う、と」
「コピー!」
受け持ちのエリアが落ち着き、キャンプシップへアクシィが連絡を入れる。さほど遠くない場所からまだ銃声や剣戟の音が聞こえるが、
「イクストルさん、さすがですね!」
「そう、君の働きも見事ですよ。とりあえず、指示を待ちましょう」
――どう話しかけたら良いんだろう。こんな女の人と組むことになるなんて思ってなかった。緊張するな……
キャティアは、遠くに見える雪山に目線を向けている。彼女にとっては久しぶりの地上でもある。ナベリウス森林地帯の風を受けながら、アークスという組織の役割、自分が組みしていた海軍、そして、なぜ自分は今ここにいるのかを思索していた。
(アークスの戦いか……ダーカー種は苦しみや怨嗟の声は出さない。ダーカー因子に侵食された生物、機械は殺すか破壊するしか無い。わかりやすくて単純な世界……)
「――さん」
「イクストルさん!」
「え、ああ、ごめんなさい。応答は来た?」
「緊急連絡です。エリアC担当のアークスがエネミーに包囲され危険とのこと。急行して、教導官役のアークスと戦闘艇が到着するまで援護せよ。とのことです」
「分かった。超過手当もらわないとね」
「え?」
「冗談だよ、さあ、行こうか」
エリアCを担当していたアークスを示すマーカーまでおよそ五百メートル。その地点は、まだダーカー因子の反応が強い。二人はその場所まで急行する。あと二百メートルの地点でキャティアが足を止めた。
「君はそこで止まって」
「え?急がなきゃ」
「私が突撃する。君はここからライフルにスコープをつけて援護射撃をお願い。特に地上ではなく、高所に注意して見張っててほしいの」
「一人で大丈夫ですか?戦力分散は危ないと思いますが……」
「ここは女のカンを信じてほしい。ちょっとだけ嫌な予感がするんだ」
目的地点は現地点から若干くぼんだ地形になっている。付近にダーカー因子反応や動体反応は見当たらない。アクシィはほんの一瞬思考し、すぐに意図を理解した。
「わかりました。お気をつけて」
「君も」
彼は、ライフルに長距離射撃用のスコープを装着し、目的地点の様子を視る。エリアCのアークスは、男女のペアだった。まだ養成学校を出たばかりの若いアークスだ。少年のほうはハンターのようだが、すでにダガンの鎌によるものだろうか、腕に深手を負っている。少女のほうはおそらくフォース、にじり寄るダーカー種に炎系テクニックを浴びせているが、消耗が激しい様子がスコープ越しでも分かる。あれだとそう長くは持たない。
――三十四秒後
三匹のダガンが、少女へ鎌を振り下ろす。その刹那、フォトンによる炸裂が生じた。コアを焼かれたダガンが黒い粒子となって消えていく。
「間に合った。無事?」
「は……はい!」
「もう少しだけ頑張ろう、私がエネミー散らすから、君は相棒にレスタを」
「はい!!」
(ダガンが七、そのうち重侵蝕個体三、カルターゴはいない。原生種なし)
(確かに、新兵には荷が重い相手だね)
(ここまで状況は悪化してるんだね)
重侵蝕……赤黒い腫瘍を思わせる色合いの侵蝕核をもつダガンが新しい獲物に襲いかかる。
「所詮はクソ蟲、遅いよ」
キャティアは半身になって、その攻撃を躱し、がら空きになった侵蝕核にウォンドを叩きつける。ウォンドに込めた光属性のフォトンが炸裂する。クラス”テクター”の戦闘術”法撃爆発”だ。直撃を受けたダガンは消滅、まわりのダガンも動きが止まる。
「好機!ゾンディール!」
一瞬だけ、バチッ!という破裂音がする。そして、残るダガンがその場所に吸い込まれていく。
「さて、消えなさい」
キャティアがその場所に向かってウォンドを振り下ろす。更に横に薙ぐ。テクニック”ゾンディール”が発動した場所に吸い寄せられた五匹のダガンが消滅した。
「残り二匹」
その時、
「きゃあっ!!」
後方から悲鳴が聞こえる。二匹のダガン……否、体躯がひときわ大きく、通常個体より赤みを帯びた禍々しい色をしている。
「エル・ダガン!」
エル・ダガン、ダガンの変異種とされているが、蟲型ダーカーの隊長格の個体と呼ばれている”ブリアーダ”によって生み出される、極めて危険な個体だ。ということは、近くに、母体となるブリアーダがいることになる。
――アクシィは、その様子をスコープ越しに確認していた。
「高所に注意して見張っててほしいの」
(なるほど……ブリアーダを警戒していたのか)
アクシィは、銃口を少し上に向ける。
「いた!」
背部に蜘蛛やダニのような腹部を持った個体、ブリアーダだ。キャティアと、新人アークス二名が、エル・ダガンと戦っているその場所に、まさに毒液を吹きかけようと、腹部を膨らませている。
アクシィは、引き金を引いた。狙うは腹部の頂点に赤く光るブリアーダのコア。手持ちのライフルは、汎用的に支給される武器、通称”ヴィタライフル”。長距離射撃の性能は決して高くない。だが、中距離におけるセミオート射撃の精度は比較的良好で、持つものの技倆が戦果を分ける武器である。
――初弾、もう一発、もう一発
三発目が、ブリアーダのコアに命中し、ブリアーダが地上へ墜落する。
「君!あそこに向かってテクニック!」
少女がロッドを構え”フォイエ”を放つ。ブリアーダは炎に包まれ動きが止まった。同時に、アークスで汎用的に使われている地上戦闘艇がやってきた。間に合ったのだ。
「こちら、デルタ02、地上掃射を開始する」
大口径ガトリングガンによる弾丸の雨が降り注ぎ、ブリアーダは跡形もなく砕け散った。また、母体であるブリアーダを失ったエル・ダガンも、駆けつけた教導役のアークスによって処理された。
「いやぁ~、こんなに敵さんが集まってるなんて、リサは油断していました。でも、たくさんのダーカーを撃ち殺せてリサは満足ですよぉ~。ふふ、うふふふ」
「こちらこそ、素早い到着に感謝します」
「あなたもなかなかやりますねぇ、ほんとにルーキーさんですか?」
「……」
「まあ、みんな生き残ったし、結果オーライ!こんなにダーカーが湧くなんて、上層部も思ってなかったんでしょうねぇ。あの人達は何してたんでしょうね」
「ところで、あなたの相棒さんの長距離からの援護、お見事でしたねぇ。レンジャーとして私も是非お会いしてみたいですよ、ふふ、ではでは!では~」
――変な人だったけど、悪い人間ではなさそう
「あの……」
「ん?」
「助けてくれてありがとうございます。お姉さま」
「ありがとう!助かりました」
「え……だって、仕事だからね(お姉さまってなにさ!)」
「この恩はいずれお返ししますね」
「そう、気持ちはありがたく受け取っておくね。まずは早く傷を治すこと。また一緒に戦えるといいね、お二人さん」
「はいっ!」
(ま、こんなのも、ありかな?)
「イクストルさーん!イクストルさん!」
「あ、オーキド君、ご苦労様。援護射撃、見事だったよ」
「いえ、むしろ適切な指示にぼく感心したんです!すごいです!」
「ところで、イクストルさんはどこで訓練したんですか?まるで歴戦の勇士のような戦いぶりでした!」
「……まあ、ちょっとね。さて、帰ろうか」
「はいっ!」
――
「第一船団、フェオ……か」
キャティアもアークスシップへ帰還する。帰還後は、監査官へ任務報告をすることになっている。それが終わればひとまずの仕事は終わりだ。
「ご苦労さまでした。キャティア・イクストル。今後もあなたの活躍に期待します」
「はっ」
「ところで、フェオにおける住居申請ですが、主計科から連絡がありまして、私がキーを預かっております」
「助かります」
「どうぞ、場所は……」
(二人部屋か……士官学校以来だ)
キャティアも、海軍での戦歴はあってもアークスとしては新人、しばらくは他の新人アークスと同様、アークス用の官舎に住まうことにした。もっとも、海軍では佐官だったので、自立した生活ができないわけではないが、アークスという組織において足回りが重たくなることを避けるという意図からだ。支給される官舎は、大抵が二人、もしくは、三人で生活する形になっている。生活費用はほぼ無料に近い。
(ルームメイト……話の分かる人間ならいいな……)
「あれ?」
「あ、イクストルさん!こんにちは!」
「君も、この官舎なの?」
「はい!新しい生活!楽しみです!」
「そう、ところで、部屋はどこになるのかな?」
「えっと……ここです!」
「ここ……って、え?」
「えぇ?」
「私もここ……」
「つまり……」
数秒後、二人の絶叫があたりに響き渡った。
(アークス……この子はキャストといえど男の子だよ。何考えてるのさ!)
(バディとしては頼りになるけど、このお姉さんと同居……不安だな)
キャティアの個人端末に、一通のメールが来ていた。
――君たちの新生活に祝福を!アークスでは、男女のルームシェアも実は珍しいことじゃありません。居住空間が限られているという事情もあります。また、海軍と文化が違うことを学ぶ意味でも、あえて相棒(バディ)と同室という処置を取らせていただきました。何か不都合や生活で困難を感じた場合は、第一船団:フェオ主計科までお問い合わせください。
「……図られた!!はめられた!!」
後に”守護輝士”と呼ばれるアークスが初陣を飾った日と同日の出来事である。
(もしよかったら、応援よろしくね!
最後まで読んでくれてありがとう!次が第1章になり、登場人物も賑やかにしていく予定です。また、1話毎のボリュームもコンパクトになると思います。序章は若干重たい雰囲気でしたが、しばらくはゆる~い感じでいくプロットになってます!